農業は、なくてはならない仕事です。2020年の東京オリッピックに向けて、有機農産物やJ-GAP認証農産物を増やす動きが盛んになっています。私は20年以上、有機栽培など独自のスタイルで農産物を栽培し、産直する生産者と関わってきました。

現状、農業所得の大幅な減少、後継者不足の深刻化、食料自給率の低迷、農村を取り巻く環境は、とても厳しい状況です。しかしながら、農業は国の根幹であり、「食」を支える大切なものです。

農業に興味を持つ人が少なからず増え、有機的な独自スタイルの栽培方法に憧れ、農村に住み、農業経営をしたいと移り住む人が出て来ました。地方にとっては、新規就農者(若手農業経営者)が増える良い機会です。

10年前であれば、有機栽培というだけで、一般より高価でも買ってくれる絶対数のお客様がいました。その後、有機栽培の法律が制定され、有機栽培が一般化するに伴い、価格と品質も問われるようになり、収穫量と品質の安定が求められるようになってきました。また、大手スーパーが市場を占有することにより、数店舗の小規模のスーパーが減少し、地方でそれら農産物を扱ってくれるところが激減しました。

新規就農者(若手農業経営者)は、売り上げの柱となる主力農産物を何にするのか。野菜や果樹を主力とするのか、主穀作を主力にするか、複合的にするのかで農業経営は変わってきます。何を選ぶかは、年間通して晴天が多い地域なのか、日本海側のように制限される地域か、また、土壌の種類、灌水施設の条件などでも柱が変わってきます。
今、安全で安心な農産物に対する認知度は上がって、栽培経費は上がっても、農産物の価格は上がってきません。そのため、継続できる農業ができている農業経営者は、なかなか増えないという現状です。

農村を見ていると、農業人口の3分の2を占める平均年齢65歳以上のベテラン農業者が、当然元気であり、技術も農業設備も、そして、発言権、決定権も持っています。しかし、これからの10年先を想定すると、どうやって3分の1以下の数の若手農業経営者へ技術も農業施設、発言権、決定権を譲っていくか、ベテラン農業者は早く譲ってほしいし、若手農業経営者は譲ってもらえる存在にならなくてはいけないと思います。

高齢者で、後継者のいない人は、農業経営をしたい人に、施設も圃場も機械もそのまま譲り、その邪魔をしないで、土地の集約を応援すると良いと思います。

新規就農者(若手農業経営者)は、農薬を使っても、商品としての農産物を、適正な価格で適正な量を作ることから始め、経営の柱となる栽培を確立し、5年かけて、経営を軌道に乗せることを目標にし、その後、自分がしたい農業スタイルに取り組むことをお勧めしたいと思います。5年で土作りのこと、作業工程のこと、肥料のこと、発酵のこと、植物生理のことを学んで、栽培ができれば、自然と農薬は最低限の量となると思います。

そこに、農業ITが加わり、記録を取り、工程や環境条件を数値かすること、また、発信することで、より農業経の安定化を進めることができるようになると思います。
経営の柱を立てることを第一にし、「ほぼ有機栽培」である特別栽培で、できるだけ農薬を使いたくないというスタンスで農業経営を始めることが良いのではと考えます。
自分で栽培し、加工し、自分で売ることができる人は、かなり能力が高い人です。普通の人は、農産物を適正な価格で販売してくれる取引先を見つけ、作ることにできるだけ専念することが望ましいと思います。

地域に仲間を作り、販売先を共有する。その上で、品質と供給量を安定させると取り組み、既存の習慣、既存の組織に囚われない組織が必要になると思います。
人口が減少し、農業経営をする人が、田舎から減少し続ける現代の農村で、今、農業で経営をしている、できているだけで素晴らしいのです。そして、新規就農者(若手農業経営者)が加わり、各地で地域にあった農村のスタイルができていって欲しいと思います。

株式会社国際有機公社 吉田 剛