ありきたりのタイトルで申し訳ありません。
いまさらAMAZON対IBMというわけではないが、先日東京で偶然にも同一会場で開催された、これらITベンダーによるセミナーに参加してきたので、その様子をご紹介したいと思います。
会場は品川のグランドプリンスホテル新高輪 5月30日~6月1日 AWS Summit東京 2018 来場者25,000人以上(主催者発表)、6月11日~12日 IBM Think Japan2018 来場予定者5,500人(パンフレット)。

イベント全体の印象
AWS Summitは東京、大阪で毎年開催されているイベント、私は初参加でした。
参加者が多く会場間の移動もままならないほどの大盛況でした。IBMのイベントも人気のセッションは立ち見が出るほど人が多く盛況だった。展示ブースもあり、AWS、IBM両方のイベントに参加しているベンダーも多かった。

両イベントとも基調講演、テクニカルセッション、パートナーベンダーのセッション、お客様事例などに分類されていた。
どちらもクラウドサービスを利用した具体的な事例を紹介していてユーザーの生の声を聞くことができ私も含め、参加者にとっては得るものは多かったと思う。

AWS基調講演

IBM展示ブース

クラウドサービスの動向
レンタルサーバーから始まったクラウドサービスもいまや、ありとあらゆるサービスが受けられるようになった。
2030年には90%の企業がクラウドサービスを利用するとAWSのセッションで説明があったが日本ではもっと早くこの数字に達すると思われる。
いまどき自前のコンピューター(オンプレ環境)を最初に準備しようと考えるユーザーは少ないだろう。

サービスをすごい勢いで拡張、拡充する彼らはどんなサービスに力を入れているのだろうか。

それぞれのクラウドサービスの共通点と相違点
AWSには多くのサービスメニューがあり、多数のサービスを自由に組み合わせて使えるように環境を提供する。
ユーザーが自分のビジネスモデルに合致するシステムを構築できるかはユーザー自身(開発者)の判断と腕(技術力)にかかっている。
AWSはそれを支援し必要があればサービスを改善、拡張する。セキュリティーやバックアップなども含めユーザーの要件をAWSの機能を組み合わせて実現していく。
AWSの主たるターゲット顧客はB2Cサービスを提供するサービスプロバイダー、ベンチャーの開発者なのだろうか。

対するIBMクラウドサービスはデータ分析やブロックチェーン、AI、量子コンピューティングなどの利用目的を設定し、それらをワンストップサービスとして提供する。
IBMは従来からの顧客である、どちらかと言えば大企業の情報システム部門に新しいサービスを提供していく、といった観点でサービスの拡張に力を注いでいるように感じた。
お客様がやりたいことをいかに早く実現するか、に注力しているように見える。またターゲット顧客を意識してかセキュリティー、ガバナンス、バックアップということについて言及していた。

クラウド環境が早く構成できても、データを投入して分析結果を出すまでには、様々な試行錯誤が必要で、そこに目をつけたサービス提供をしていくという方向性を感じた。(表1参照)
AWSはGitHubなどのオープンな環境を使いユーザーのノウハウを蓄積、展開していく、IBMは自社の持つノウハウを提供していくという基本路線で、オープンソースもサポートすると言っても利益を上げるためには自社のサービスやソフトを活用してもらいたい、というのが本心だろう。

◆表1:サービス提供視点の違い

視点 AMAZON AWS IBM
中心顧客 コンシューマ向けサービスベンダー 大企業の情報処理部門
セグメント B2B<B2C B2B>B2C
サービス提供方針 プラットフォーム ワンストップサービス

農業における利用事例
それぞれのセッションで農業におけるクラウドサービスお客様事例が紹介されていた。
AWSはヤンマー株式会社が滋賀県米原市(米原東口まちづくり協議会)で行っている実装実験でデータに基づく植物生産という目標を掲げていた。
こちらはAWSのIoTサービスをフルに活用しようと取り組みでAWS GreenGrassというサービスを利用しているそうだ。

このサービスの特徴はIoTデバイスを単なるセンサーに留めず、そこにインテリジェンスを持たせIoTのデバイス側でのコンピューティング(エッジ拡張と呼んでいた)、メッセージング、同期、機械学習推論などの機能を持たせ、IoTサービスとクラウドサービスをよりシームレスにしようと試みるものだ。
200㎡ほどの小さな圃場でトマトを栽培する実験だが今後の展開に期待したい。

ヤンマーニュースリリースを参照
AI/IoTを活用した次世代施設園芸システムの確立に向けたテストベッドの運用を開始

IBMのほうは、日本情報通信㈱と㈱NTTドコモが㈱アプレで行っている実証実験をブースとミニシアターで紹介していた。
基本構成としては、各種のIoTデバイス(センサー)とAI(Watson)の組み合わせである。AIによる画像解析で植物の成長度合いを自動判定し作業者に連絡する。もしくは外気象と天気予報、ハウス内の温湿度データを組み合わせ天窓、側窓、換気扇の開閉、起動停止を自動化しようとするもの。今後は植物工場における様々な栽培ノウハウを、機械学習を利用することで農業の匠の技をAIで肩代わりさせようとする。

㈱アプレでは、植物工場経営のハード及びソフトをワンパッケージにして、独自の栽培技術の横展開、システム販売を㈱NTTドコモと進めていく計画。

クラウドサービスまとめ
講演者の誰かも主張していたが、ハードウェアの初期投資や保守を気にせずにアプリを作れる良い時代になった。ソフトウェアエンジニアが活躍できる時代になった。

大手でなくても、しっかりしたエンジニアを有するベンダーが、コストパフォーマンスの良いシステムを提供でき、変化の早いこの時代にマッチしたシステム構築ができるようになった。

さらにAIの可能性はますます広がりを見せているし、IoTを安価に試せることで農業においても、クラウドコンピューティングを大いに利用すべき時が来たと思います。

アグリ・コネクションズ株式会社 高森満